アルコール依存症者が断酒を開始して最初に疑問に思うことは、具体的にどうすれば飲酒を辞めることが出来るようになるのか?という点です。
むしろ、この疑問に答えられたら一生飲むこともありませんし、世の中から多くのアルコール依存症者がいなくなるでしょう。
実は、明確で具体的な一つの方法はない、と言っても良いのです。
アルコール依存症はそれほどに回復が難しいのです。
しかし、多くの回復者が経験として語るように、解決策はあります。
ここでは、解決策の一つとしてなるべく「やってはいけないこと」を紹介します。
「こうすれば回復する」というアプローチではありませんが、「こうすれば飲まない」というアプローチでも飲酒を遠ざけるコツを得ることが可能になります。
多くの人が経験している再飲酒をする「きっかけ」となった出来事を紹介し、具体的なメカニズムを解説します。
さらに、最後まで読めば、あなた自身にとっての飲酒の「きっかけ」を考える機会になります。
この記事は
・断酒を開始したばかりの人
・自分自身にとっての飲酒の「きっかけ」を知りたい人
に向けて書かれています
目次
断酒の初心者は感情が揺さぶられる環境を避けるべき
アルコール依存症者で断酒を初めたての人は、感情が揺さぶられるような環境は避けなければいけません。
アルコール依存症者が再飲酒をしてしまう原因となるシチュエーションは、感情が大きく動いた場合が多くあります。
したがって、出来る限り感情を平静に保つ必要があります。
しかし、人間はかなりの修業を積んだ僧侶や、超一流のアスリートでもない限り感情を一定に保っていることは難しいのが現実です。
僧侶やアスリートでさえ、意図的に感情をコントロールしている以上、そもそも感情が揺さぶられているという前提があるものです。
まず、避けるべきは、感情が揺さぶられてしまう環境を避けることです。
感情は環境の変化によってすぐに揺さぶられてしまいます。
仕事による極度の緊張や、恋愛による至上の喜び、そして旅行の時の興奮でさえも飲酒のきっかけになります。
さらに、避けるべき事柄として、自分自身が本当に飲酒欲求を抑えられるのかをテストするために馴染みだった居酒屋などに行ってみることです。
ここからは、再飲酒をしていますケースが最も多い環境の例を挙げていきます。
- 仕事
- 恋愛
- 旅行
- 飲酒欲求テスト
- あなたにとっての〇〇
1.仕事での負の環境は危険が付きまとう
仕事から受ける負の環境や精神的なストレスは、再飲酒の危険が付きまといます。
生きていく上では、働いてお金を稼がなければいけません。
そのため、私たちは否応なく仕事をすることになります。
しかし、仕事には人間関係のストレスがつきものですし、経済的な意味での緊張も多分にあります。
仕事での人間関係はかなりのフラストレーションやストレスが溜まってしまいます。
上司や部下との関係や給料面や仕事環境の不満など。
お金が無ければ嫌いな仕事や人間関係も我慢していかなければなりません。
人生の大部分の時間を仕事に費やさなければならないものの、仕事は再飲酒の危険を多く含んでいるのです。
私が主治医に言われたこととして、「仕事には気をつけろ」ということでした。
私自身が仕事に集中しすぎるし、真面目に何でも引き受ける性格だったためにアドバイスをしてくれたのでした。
私はアルコールの飲み過ぎでどん底にいた時代に、何度となく会社を辞めています。
急に行きたくなくなり、家から出られなくなってしまうのです。
結局、給料ももらえず信用も失くしてしまうという散々な結果が待ち受けていました。
したがって、私個人だけではなく依存症回復者からの経験では、お金を稼ぐということを優先順位にしてはいけません。
最も優先させるべきなのはお酒を飲まないということです。
そのため、一時でもお金が稼げない期間があろうとも、自身に合わない会社であれば辞めてしまいましょう。
自分自身がフラストレーションやストレスが溜まってしまう仕事や会社であれば、再飲酒してしまうのは時間の問題です。
お酒を飲んでしまえば、辞めて一時的に収入が途絶えてしまう以上に最悪な状況になってしまいます。
今現在、自分の仕事環境に違和感を感じているのであればすぐに転職してしまうことをおすすめします。
2.恋愛は感情のブレが激しい
恋愛ほど感情のブレが激しい要素はありません。
特に、感情の落ち込みがひどい場合は、少し優しくされただけでも恋に落ちやすいものです。
同じ症状を持っている人同士ならば、なおさら心を開きやすく恋愛関係になってしまうこともあります。
具体的には医師やカウンセラー、病院の看護師やスタッフなどです。
また、アルコール依存症が心の病であり、自助会などで自身の素直な気持ちを告白する場もあります。
同じ病を抱えた者同士が共鳴しあい恋愛関係になることは多くあります。
恋愛関係は、うまくいっている時は思考の幸福に包まれます。
人生がばら色になり、これまでのどん底生活から救われた気分にもなります。
こういった興奮状態も危険な状態ではありますが、それ以上に恋愛で危険なのはうまくいっていない状況です。
恋愛には嫉妬や不安、疑いなどが複雑に絡まり合います。
最終的には失恋することもありますし、お互いを傷つけ合うことにも発展してしまいます。
恋愛は幸福感を与えられる反面、全く逆の激しい怒りや嫉妬の感情へも一瞬で変化します。
俗に言う、愛と憎しみというやつです。
これらの負の感情が再飲酒への引き金となることが多くあります。
「自分自身を忘れてしまいたい」、「不安や嫉妬の感情から逃れたい」、「怒りをごまかしたい」などは、典型的な恋愛による再飲酒の原因です。
「恋は堕ちてしまうもの」であり、対応の方法が無いように思えます。
この恋愛に対する対応方法は、恋愛対象になりそうな相手には近づかないということしかありません。
恋愛対象が異性である場合は、異性が集まる場所に行かないようにするのです。
ここでの話は断酒の初心者に限定しています。
アルコール依存症は一生治ることのない症状ですが、一生恋愛をしていはいけないという訳ではありません。
断酒を継続していけば恋愛や結婚なども可能になっていきます。
むしろ、飲酒時代よりも、成熟した人間関係を形作ることも可能になるのです。
断酒を初めたばかりの人は、なるべく恋愛による感情のブレを避けるようにしましょう。
3.旅行は興奮した勢いで飲んでしまう
旅行などのレジャーも断酒初心者には危険な行為であり、避けたほうが良いと言われています。
気分転換になると思われがちな旅行も実は、断酒初心者にとっては危険になります。
特に海外旅行などの、自身が住み慣れていない国への渡航は感情を緊張させますし興奮もさせます。
海外では、旅行客に対する接待にお酒を勧めるのは当然でしょう。
もちろん、接待をする側はあなたがアルコール依存症であり断酒をしているということなど知りません。
緊張を緩和させるため、あるいは興奮をさらに助長するためにビールの一杯に手が伸びてしまえばもう止まりません。
海外旅行は気持ちの面でも上がり下がりが大きく、接待を受けてしまえば簡単に再飲酒をしてしまいます。
旅行は海外に限ったことではありません。
国内の旅行でも、宿泊する場所にお酒は当たり前にありますし、積極的に勧められます。
自分自身が気を付けていても、周りの旅行者たちは旅を楽しむためにもお酒を飲んでいます。
パーティーをしている人々もいる中で、自分自身だけはお酒を飲まずに過ごすことが出来るでしょうか。
自分一人で飲まないでいる状態が続き、飲酒を我慢している状況はかなり危険です。
飲酒を我慢しているということは、既に飲酒欲求が湧いているということでもあります。
結局、この飲酒欲求を我慢できずに再飲酒に至ってしまうことは大いにあり得ます。
断酒初心者の場合は、リフレッシュでも旅行に出かけることは避けたほうが無難です。
旅行に行くにしても、ハイキングなどの様になるべくお酒を提供されないようなプランにしておくことが必要です。
4.自分の飲酒欲求をテストするのは愚かな行為
自分の我慢力を試すために居酒屋などへ行くことは辞めましょう。
実は、断酒を始めた人の中にはアルコールへの免疫のテストのために馴染みだった居酒屋やスナックに行く人は多くいます。
断酒を開始して1ヶ月ほどが経つと、不思議なくらいに飲酒欲求も消えてしまう瞬間があります。
そのため、自分はもうお酒を飲むことは無いと考えてしまいがちです。
そして、そのテストは失敗に終わることが多くあります。
もちろん、馴染みだったお店に行ったときは自分だけお酒を飲まないという姿を見せられる人はいます。
しかし、飲んでいた時代の雰囲気を思い出してしまうと、我慢できずに自分一人家で飲み始めてしまうということがあるのです。
自分の飲酒欲求へのテストをするのは愚かな行為だと認識しましょう。
あなたも知っている通り、アルコール依存症は人間が敵うことのない強力で奇怪な相手です。
24時間365日お酒を買えるし飲めるのが日本という国です。
しかし、断酒を継続するうえで鉄則なのは、自らお酒に近づくということは避けるということです。
自ら危険な範囲に入っていくということ絶対にやめておきましょう。
自分自身がアルコール依存症なのかどうかを確かめるためには、アルコール依存症チェックテストにしておきましょう。
5.あなたにとって飲酒の引き金になるのは〇〇です
最後に紹介する危険な状況は〇〇です。
つまり、あなたにとって危険な状況です。
ここまでは一般的な危険な状況を紹介してきましたが、全てがあてはまる人もいるでしょうし、全て当てはまらないという人もいることでしょう。
個人によって飲酒の引き金となる「きっかけ」は異なります。
断酒を継続するためにはあなたにとっての危険な状況を認識する必要があります。
危険な状況が分かればその状況に対する解決策を練ることが出来るようになるのです。
最も有効な対策は危険な状況に近づかないことです。
「近づかない」という方法は物理的にも精神的にも有効な手段です。
あくまで統計的なデータではありますが、アルコール依存症者が2年から3年の間断酒を継続することが出来れば、その後は一生お酒を飲まずに生きていくことが出来るようになります。
危険な状況を一生避けなければならないということではありません。
断酒を継続して2~3年が経てば、旅行も恋愛もお酒を飲むことなく楽しむことが出来るようになるのです。
断酒初心者の人は危険な状況を認識し、近づかないように気をつけましょう。
まとめ
一度、お酒にハマってしまうと、二度と飲酒をコントロールすることは出来ません。
しかも、飲酒欲求の引き金を引いてしまう罠は至る部分にしかけられています。
人間の感情はデリケートであり、些細な事でもぶれてしまいがちです。
しかし、断酒を継続させるためには、意識的に感情を落ち着かせておく必要もあります。
なるべく、感情を刺激させるような場所には立ち寄らないことも、再飲酒を避けるコツです。