アルコール依存症やアルコール中毒・薬物依存症などといった言葉が、世間では多く使われています。
しかし、これらの言葉を正しく理解している人は意外に多くありません。
言葉の意味を知らないままでいることで、これらの症状を的確に理解出来ずに対応を誤ってしまうこともあります。
依存症の問題の解決には正しくその問題を理解することから始まります。
これは、依存症の問題を抱えている本人だけではなく、依存症者の周りにいる人々にも共通して言えることです。
言葉は問題を的確に表すために作られています。
そのため、これらの言葉を理解することが、解決の第一歩となるのです。
この記事では、アルコール依存症と薬物依存症の言葉の違いを紹介します。
この記事は
・アルコール依存症と薬物依存症の違いを知りたい人
・アルコール依存症や薬物依存症に苦しむ人
・依存症者が近しい関係にある人
に向けて書かれています。
目次
アルコール依存症は薬物依存症の一種
意外と知られていませんが、アルコール依存症は薬物依存症の一種です。
つまり、アルコール依存症も薬物依存症であるということです。
アルコールも他の薬物であるコカインやヘロイン、覚せい剤、または病院で処方される睡眠薬などと同様に人工的に作られた薬です。
アルコールは消毒や麻酔などにも利用されるため、用途は多様です。
アルコール成分をお酒として摂取することで、脳がある程度の麻痺を起こし快い気分にさせてくれます。
いわゆる酩酊状態です。
この酩酊状態が脳への影響を与えるだけでなく精神的にも影響を与えます。
この影響はアルコールだけではなく、非合法である麻薬と呼ばれる薬物にも同様の作用があります。
したがって、人間の身体や精神に与える影響はアルコールであろうが、薬物であろうが関係ないのです。
アルコールは合法であり日本の文化には欠かせない
それでは、本題である「なぜアルコール依存症と薬物依存症」が分けて使われるようになったのでしょうか。
このことは諸説ありますが、最も重要な要素は日本の法律によって合法とされているか、非合法とされているか、という部分です。
皆さんが知っている通り、日本の法律ではアルコールは合法です。
さらに、冠婚葬祭などの儀式事や仕事の接待などを含めて、飲酒は日本の伝統文化には欠かせない飲み物でもあります。
飲み過ぎて飲酒運転をしたり何らかの事件を起こしたりしない限り、アルコールを飲んでいても警察に逮捕されることはありません。
お酒の飲み過ぎで乱れてしまい、他人からだらしないと思われたとしても犯罪者としてある扱われてしまう人はいません。
そのため、どちらも依存することに変わりありませんが、アルコール依存症と薬物依存症が明確に分けられているのです。
ちなみにこの状況は海外でも同様です。
アルコール依存症は「Alcoholism」、薬物依存症は「Drug Addiction」と言い分けられています。
アルコール依存症とアルコール中毒もほとんど同じ意味
「アルコール中毒」という言葉もありますが、これもアルコール依存症と同じような状態を指す言葉です。
しかし、時代の流れによってアルコール中毒からアルコール依存症と名前を変化させた経緯があります。
また、アルコール中毒は精神的な症状ではなく、身体的な症状のみを指す場合にも用いられます。
アルコール中毒は「急性アルコール中毒」と「慢性アルコール中毒」に分けられます。
アルコール中毒と言う場合、特に「急性アルコール中毒」という言葉を利用する場合は精神的な部分は含めず、身体的な症状を表します。
そのため、身体的な症状にのみ利用する場合もあります。
また、現在ではアルコール依存症などの依存症は精神疾患として「病気」として認められています。
一部には「アル中」などのような差別用語として言葉が独り歩きしてしまったことも含め、名前を変更するに至った経緯があります。
したがって、「身体的・精神的な病気であること」、「差別表現を避けること」などの要因によって、アルコール中毒はアルコール依存症へと名前が変化したのです。
アルコール依存症は合法だから質が悪い
アルコール依存症は病気であるという医師からの見解があるものの、世間的にはこの見方はまだ定着しているとは言えません。
先ほども記述した通り、日本国内では冠婚葬祭や会社の接待、様々な場所でお酒を勧められます。
また、お酒を飲もうと思えば近くのコンビニやスーパーマーケットで24時間365日購入可能です。
しかも、いつでもどこでもお酒を飲んでいたところで法律に触れることはありません。
誰にでも飲酒を楽しむ権利が与えられているのです。
暗黙のうちに公共的なマナーは設定されているものの、冠婚葬祭や接待などではお酒を勧めることが礼儀である場合もあるのです。
合法であるために、購入や飲酒への感情的な壁は低くアルコール依存症者は何度も飲酒をくり返してしまうのです。
アルコール依存症はアルコールが日本国内で合法とされているからこそ、質が悪いとも言えるのです。
どこにでもあるアルコールを如何に避けるか?
アルコールが合法であり質が悪いとはいえ、飲酒量をコントロールしながら飲める人も多く存在しています。
お酒は人間関係の潤滑油になることもありますし、自身がアルコール依存症者だからと言って他人の楽しみを奪うようなことがあってはなりません。
また、単にじっと待っていても日本国内の法律が変わる訳ではありませんし、法律が変わったところで自分のアルコールの問題が解消される訳ではありません。
アルコール依存症者にとって大事なことは、目の前にあるアルコールに対してどのように対応するか?ということなのです。
もちろん、物理的に遠ざけるということも一つの方法ですが、ここまで説明してきた通り日本国内でアルコールのない場所はほとんど無いと言ってよいでしょう。
人によってアルコールからの距離の取り方は様々です。
そして、多くの人がアルコールを止め続けて幸せな生活を送っています。
まずは、「自分自身がどのような時にお酒を飲みたくなるのか?」
「どのようなタイミングでお酒を買ってしまうのか?」
行動を認識することから始めましょう。
合法である以上、誰も教えてはくれません。
まずは自分自身で確認してみるのが大事です。
何度も失敗してしまうことはあるかもしれません。
しかし、その度に自分自身がどのようなシチュエーションで飲んでしまうのか、知る機会にもなるのです。
失敗をするたびに自分自身が見えてきます。
アルコール依存症は完治することはありません。
しかし十分に回復する病気なのです。
まとめ
アルコール依存症と薬物依存症は、メディアなどで区別して用いられます。
それは、合法化なのか非合法なのか、という法律上の問題であり、社会的な区別の方法です。
しかしながら、アルコールも人間の身体にとっては、異物であり薬物でもあります。
したがって、アルコール依存症は薬物依存症と考えても良いものです。
お酒は法律上許されているばかりか、冠婚葬祭や会社の接待など、人間関係を円滑にするために使われます。
日本国内では、お酒を飲むことは文化と言っても過言ではありません。
そんな環境の中では、ある意味アルコール依存症は薬物依存症よりも質の悪い問題です。
薬物を進めてくる友人や知人はいないかもしれませんが、お酒をすすめてくる人は数多くいます。
しかも、お酒は孤島にでも済まない限り24時間365日、いつでもどこでも購入可能です。
まずは、自分自身の行動を客観的に見つめるためにも、どのような状況でお酒を飲んでしまうのかメモに書き出してみましょう。
断酒をしてアルコール依存症から回復するのは、自分自身の行動傾向を知ることから始まります。
アルコール依存症から回復するための具体的な方法は以下の記事でも詳しく解説しています。