アルコール依存症は決して個人の問題だけではありません。
アルコール依存症者の周りにいる人々が、好むと好まざるとにかかわらずにアルコール依存症者の社会的な問題に巻き込まれていってしまうからです。
「地獄をみたいならアルコール依存症者のいる家族をのぞいてみればいい」という言葉すらあります。
アルコール依存症者は周りにいる人々も、地獄のような生活に引きずり込みます。
簡単に縁を切れる間柄であればよいのですが、特に家族関係のような場合にはそう簡単に離れることは出来ません。
距離が置けるまでの間は、依存症者によってかなり傷つけられるようになります。
この記事ではアルコール依存症によって、起こってしまう社会・経済的な側面を私の経験をもとに紹介していきます。
しかし、これらのほとんどのことはお酒を止めることによって改善していきます。
この記事は
・アルコールによって、社会的・経済的な問題を起こしている人
・アルコール依存症の家族を持っている人
・アルコール依存症から立ち直りたいと思っている人
に向けて書かれています。
目次
アルコール依存症は社会的な問題を引き起こす
アルコールに問題がある人への社会的評価が決して良くない原因として、多くの人が依存症者によって被害を被っているという点があることは否めません。
会社の経営者はアルコール依存症者が急に会社を辞めてしまったり、約束事を簡単に破られるという経験をした人もいるかもしれません。
こういったことが原因で、大事な商談が全て水泡に帰してしまうこともあるでしょう。
アルコール依存症者の家族がいる家庭では、経済的に破綻してしまっていたりDV被害を被っている人もいます。
専門の医学用語となっていますが、アルコール依存症の親を持つ子供のことを「アダルト・チルドレン(AC)」と呼びます。
彼らのようなACのこどもたちが成長すると、親と同じようにアルコール依存症者になってしまうということはよくある話です。
実際に筆者がACです。
しかも、祖父、父、私と三代続けてアルコール依存症に悩まされました。
アルコール依存症者は本人が苦しむだけではなく、周りにいる人々や環境にも深い影響を与えていきます。
アルコール依存症は個人的なだけではなく、社会的な問題でもあるのです。
依存症者は自ら孤立してしまう
アルコール依存症者の周りにいる人々は被害を受けて、依存症者から距離を取っていくようになります。
そのため、やがてアルコール依存症者本人は孤立してしまいます。
アルコール依存症者の心持は「精神編」でも説明した通り、自分が被害者なのです。
そして、他人に八つ当たりをして人を傷つけ、自ら破滅に向かっていきます。
当たり所のない怒りや憤りが、人に向かってしまうのです。
当然のことですが、八つ当たりをした方はアルコール依存症者から距離を置いていくようになります。
そして、寂しさからお酒を飲むようになり、新たな「自分を理解してくれる仲間」を探して飲み屋を歩き回るようになります。
そのたびに「永遠の親友」を見つけては、数日後にはトラブルによって絶交されます。
トラブルが大きければ、お店から出入り禁止を言い渡されることすらあるでしょう。
これらの経験は実際に自分自身が行っていて多くの依存症者の人々に共感された経験です。
シチュエーションは異なるにしても、アルコール依存症者は着実に孤立化していくのです。
会社では問題を起こしてばかり
アルコール依存症者にとって、仕事上の細かいミスは当たり前です。
常に酔っ払った状態であれば仕事に集中できるはずもありません。
さらに、遅刻を繰り返すだけではなく、連絡も無しに急に会社に出勤しなることもあります。
そして、ついには大きなミスを犯してしまいます。
そうこうするうちに、仕事に行くことが億劫になってしまい会社を辞めてしまうのです。
自分の行いで会社に多大な迷惑をかけているにもかかわらず、多くのアルコール依存症者は他人の責任にして自分の精神を保とうとします。
会社内での問題が自分の責任ではないというマインドになってしまえば、会社内での協力関係は完全に失われてしまいます。
アルコール依存症者は、働いている間に多くの問題を起こしてしまうのです。
経済的な破綻を迎える
アルコール依存症者の多くは経済的な破綻を迎えてしまいます。
仕事を辞めて収入が絶たれたとしても、飲酒の習慣が止まるわけではありません。
時間が出来ればもっと飲むようになりますし、飲酒のためのお金を稼ぐためには楽な方法を選びます。
ギャンブルでお金を失ってしまい、手をだすのはカードローンなど。
借金をこれまでにしていなかった人でも、一度借りられてしまえばその容易さに借金の感覚など麻痺していきます。
お金を借りてはお酒かギャンブルという生活になっていきます。
毎月の固定費もお酒に消えてしまいますので、やがて貯まってくるのは借金と督促状です。
収入は閉ざされてしまっているのに、支出はどんどんと増えてしまうため、経済的な破綻は避けられないのです。
家庭の崩壊を招く
経済的な破綻や家庭内での暴力もあり、アルコール依存症者がいる家庭は崩壊してしまうこともあります。
依存症者は仕事や環境の悪化を人の責任にします。
耐えがたい不安や恐怖は怒りへと姿を変えていきます。
しかし、この当たりどころの見つけられない怒りはやがて、的にしやすい相手へと向かっていきます。
アルコール依存症者にとって、八つ当たりしやすい相手とは自分よりも弱い相手。
妻や夫であったり、恋人であったり、子供であったりもします。
実際、生活していくためには経済的な安定も必要ですし、家族内の人間関係も重要です。
家庭内が荒れていれば、心を休ませる場はありません。
彼らにとって、アルコール依存症者のいる家族は地獄なのです。
やがて、家庭は崩壊していくのです。
アルコール依存症の成れの果ては全てを失う
アルコール依存症者も最終的には仕事、お金、家族、人間関係などすべてを失ってしまいます。
ここまで紹介してきた主な問題は私を含めた多くの人が経験していることに過ぎません。
個人によっては大事にするモノは異なります。
そして、個人で大事にしているモノをアルコール依存症者は失ってしまうのです。
さらに、アルコール依存症者は他人が大事にしているモノを破壊してしまうのです。
アルコール依存症の成れの果ては、自分自身だけではなく他人や社会をも破壊していまい全てを失ってしまうのです。
依存症からの回復に努めれば環境も回復していく
アルコール依存症者の社会・経済的な問題に言及してきました。
多くの問題が一般的には信じられないくらいの大きさになっています。
しかしながら、これらの多くの問題はアルコールが原因である以上、飲酒を辞めれば多くの問題を解決することも十分に可能です。
一日、一日を大切にお酒抜きで生きていくようにすれば、一つひとつ問題も解決していきます。
もちろん過去の行いや過ちをやり直すことは不可能ですが、過去の失敗を教訓に未来に活かすことは可能なのです。
また、傷つけてしまった人々との関係も、一日、一日を誠実に過ごすことによって修復していくことだってあります。
飲酒時代がどん底であったとしても、アルコール依存症の回復に努めて新しい人生を歩き始め、楽しく生きている人は何百万人といます。
また、現在ではアルコール依存症者の家族を持って育った人々の心のケアをする施設やプログラムも存在します。
アルコール依存症の問題は本人だけでなく、多くの人々の協力も得ながら解決していきましょう。