人工知能(AI)の開発や研究は、日々進歩しています。
人工知能を利用した技術によって、人間の生活は便利になりました。
しかし、多くの識者が警鐘を鳴らしているように、これまでの労働市場が急激に変化を強いられています。
これまでに必要と思われていたような職業が、人工知能によって奪われてしまいます。
そんな人工知能が活躍する時代で、私たちが生き抜くためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。
この記事では、人工知能時代に必要な人間の能力とスキルを紹介します。
※この記事は、『人工知能を超える人間の強みとは』奈良潤著と筆者の見解を元に書かれています。
目次
人工知能(AI)時代に鍛えるべき能力
人工知能時代に鍛えるべき能力は、人工知能では処理することの出来ない極めて人間的な能力です。
例えば、以下のような能力は人間特有であり、人工知能では代替できません。
- 発想力や創造力
- 発見能力や察知能力
- 主体的能力や意思決定能力
- コミュニケーション能力
一般的な文脈では、「熟練者の勘」「直感」などと呼ばれる部分や、「人間とのコミュニケーション能力」「創造的な能力」などです。
一方で、機械である人工知能が優れている能力には、「作業や計算の正確性」や「体力の無限性」「感情の入らない判断」などが挙げられます。
ここからは、人工知能時代に人間が取得しておくべき能力について詳しく解説していきましょう。
人工知能について網羅的に学ぶなら、資格試験に挑戦する事が近道です。
発想力や創造力
これまでに無かったような発想力や、芸術作品を生み出す創造力は人間だけが持っている能力です。
人間はこの発想力があるために「より良く」文明を発展させてきましたし、新しい芸術性は人間の心を動かすことに寄与してきました。
人工知能は「知能」と呼ばれているものの、人間にとって「より良い」未来を開拓するための発想力を備えていません。
そもそも、人間にとっての「より良い」環境や感情を持ち合わせていないからです。
人間は生活している中で、意識するとしないとに関係なく「こうだったらもっと便利になる」「もっとこの部分を改善してほしい」などのように考えています。
毎年のように流行語があるように、人間は新しい言葉を生み出しますし、実際に日常会話で使用します。
また、猿から人間に進化していく中で、人間は道具を使うようになり、今ではコンピュータで世界中の情報にアクセスできます。
そんな、人間の発想力や創造力はついに自分たちの分身である人工知能を作り出す領域にまで発展しました。
発想力や創造力を鍛えることは、人工知能では補えない部分です。普段の生活の小さな気づきに注意深くなりましょう。
発見能力や察知能力
何かを発見する能力や、問題を察知する能力も人間ならではの能力と言えるでしょう。
文明が発展していく過程で、人間はさまざまな問題に直面します。
しかし、問題に直面するたびに問題となっている部分を発見し解決してきました。
事実上何も起こっていない状態でも、将来的に問題が生じるであろう点を察知する能力によって事前に解決できます。
この問題を発見、察知する部分が人間ならではの能力です。
既に与えられている問題は、解決策や答えを導き出せば良いでしょう。
しかし、そもそも問題となっている部分はどこなのか?
将来的に問題が生じるであろう点はどこにあるのか?
などの問題発見能力を鍛えるべきです。
世の中にある多くの仕事は、人間の生活をより良いものにすることで成立します。
より良い生活は、今目の前にある問題を解決させることで得られます。
解決すべき問題の指摘や抽出は、解決の前段階。
つまり、人工知能時代に必要な人間の能力は、問題を発見・察知する能力です。
主体的能力や意思決定能力
主体的に動いたり、意思を決定することは人工知能時代でも人間が担わなければいけません。
機械は正確な計算力で、データに基づいた方向性を指示してくれます。
しかし、機械には感情がありませんし人格もありません。
当然、責任感もありませんし、責任を負わすこともできません。
人工知能によって、正確な計算がされてもビジネスの現場や医療、政治判断に至るまで全ては最終的な人間の判断に依存します。
したがって、責任と勇気のある意思決定能力を持った人間は、今後も必要なポジションを得られます。
また、主体的能力とは、自ら進んで問題に向き合い解決していくことを意味します。
人工知能は感情を持ち合わせていません。
そのため、もしも目の前に病気や怪我で苦しんでいる人が居たとしても助けることはありません。
人工知能は、目の前に重篤な病気や怪我に苦しんでいる人が居たとしても、それを察知して分析することはできます。
しかし、自ら助けようとはしません。
人間は違います。
人間は経験として病気の苦しみや怪我の痛みを知っています。
そのため、目の前の病人や怪我人の気持ちを把握できます。
そして、主体的に助けようとするのです。
これこそ人間特有の能力だと言えるでしょう。
人間は主体的に人を助けたり、問題を解決しようとするのです。
人工知能は、人間に命令されたタスクだけを淡々とこなす受動的な機械です。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力こそ人間が持っていて人工知能が持っていない能力です。
人間は人間と共に生きて、人間関係を形成します。
それが社会となって、世界全体を大きく動かす要因になります。
テレワークやフリーランスの仕事が浸透している現在でも、人との関わり無しに仕事は成立しません。
そもそも、仕事は人の生活を「より良い」ものにするために存在するものです。
人間をないがしろにしてしまっては、仕事は成り立ちません。
まずは人間を知ること。
人間を知るためには、積極的に他人とコミュニケーションを取る必要があります。
人間とのコミュニケーションを取ることで、多くの人材を動かす能力も身に付きますし、人間が欲しているコトやモノも把握できます。
人間を教育するのは人間ですし、人間は感情的な生き物です。
そういった感情的な生き物である人間に必要なのは、人間に人間として接するコミュニケーション能力です。
将来無くなるとされている職業とその理由
ここまでの、解説で人工知能時代には機械とは異なっている「人間的な能力」が必要とされることを理解できたと思います。
人工知能が発展してくると、人間的な能力の必要が無い機械的な労働や人工知能によって代替できる仕事は失われていきます。
それでは、人工知能が発達することによって、今後無くなっていくのはどのような職業なのでしょうか?
具体的に失われている職業は、野村総合研究所が発表している研究を参考にしてください。
細かくは、野村総合研究所の情報に譲るとして、ここでは身近にある職業で無くなっていく職業とその理由を取り上げます。
- 一般事務員
- 駅員
- 会計士
- コンビニ店員
- タクシー運転手
一般事務員
一般的な事務員は、人工知能によって代替可能な職業でしょう。
「一般的な事務員」といっても、担う仕事は多岐に渡るでしょうし、会社によって担う仕事は異なります。
しかし、データの入力や在庫商品の管理などのデータを入力するような作業、会社員の出退勤状況を把握するための事務員などは不要になります。
人工知能だけではなく、今後の会社の在庫管理や会社員の出勤状況はすべてデジタル上で管理できるようになります。
人工知能を搭載しているRPA(ロボティックプロセスオートメーション)は、数多くの企業で使われるようになりました。
このビジネス用のツールを使用することによって、在庫管理や会社員の就業常用などは全て一括で管理できるようになります。
そのため、わざわざ人件費を支払ってまで、管理者を用意する必要はなくなりました。
また、一般事務員は受付も担っている方がいました。
しかし、現在ではチャットボットのシステムが導入されることによって、電話オペレーターも必要なくなりました。
一般事務員の仕事の多くは、人工知能やDX化によって失われます。
駅員
駅員の仕事も人工知能やDX化によって失われていく仕事の一つです。
かつては駅員が担う仕事は多く、自動改札機が登場する前は切符のカットを駅員がおこなっていました。
しかし、自動改札機によってこれらの駅員は必要なくなりました。
さらに現在では、自動改札機にかざすだけで決済が完了するSuicaやPasmoなども普及してきました。
切符を買う必要が無くなると駅員が担う仕事は少なくなります。
日本国内では公共交通機関である鉄道は、網の目の様に張り巡らされています。
便利である一方で、どの電車に乗って良いのか分からなくなる問題がありました。
そういった方のために駅員が電車の案内をおこなっていました。
しかし、スマホの普及とインターネットの発展によって道に迷ったら、スマホで簡単に道を案内してくれるようになりました。
実際に電車を運転している車掌も徐々に不要になっています。
実際に、アメリカなどのネットが普及している国では、公共交通機関に駅員はほとんどいません。
日本もこの流れに沿って、駅員が少なくなっていくことが予想されます。
会計士
会計士も人工知能やDX化によって、担う人材が少なくなる職業です。
会計士の仕事はお金の流れを把握して明確にする仕事です。
特に現金会計がおこなわれている国では、不正にお金を流用する人や、犯罪者にお金が流れることもあります。
また、会社の経営においては、税金の支払いに不備や不正が無いかを確認するためにも会計士は必要でした。
しかし、お金のやりとりが現金ではなく、クレジットカードや電子マネーなどのようにデジタル会計になれば、全ての会計記録がデータとして残ります。
銀行を介すことなく会計のやり取りがデジタル化されれば、お金の流れはすべて把握できます。
会社の会計だけではなく、個人の収入や支出の流れもすべてデジタル管理可能です。
このことは、税金の支払いのための源泉徴収や確定申告の手間を無くします。
デジタル管理されている履歴は、自動で経費や私的な費用に分けてくれます。
わざわざ人間が計算をする必要が無くなるのです。
会計士を雇うのにお金を支払う必要はありません。
会計士が担っていた作業のほとんどは機械によって自動化されます。
コンビニ店員
コンビニの店員は、人工知能やDX化によって消失していく仕事の一つでしょう。
多くの識者が指摘するように、コンビニエンスストアはデジタル化と相性が良い小売店です。
全ての商品の販売はレジを通して行われます。
また、商品の発注もセンター管理されているコンピューターで行います。
つまり、仕入れや売上も全てデジタル管理されているのです。
クレジットカードや電子マネーでの支払いの場合は、支払った人のデータもデータとして蓄積されます。
そのため、今後の売れ行き商品を開発する際や、仕入れに対して売上量もデータを元にして修正していけます。
コンビニエンスストアで働いている人の経験や勘によって、仕入れをすることが無くなります。
全ては人工知能による判断に従えば、不要な仕入れを少なくして効率的な発注ができるようになります。
さらに、アメリカでは「Amazonゴー」のような、店員のいない小売店も増えてきています。
いずれは、日本国内でも店員のいないコンビニエンスストアが増えていくでしょう。
そうなれば、コンビニエンスストアの店員は最小の人員で足りるようになります。
タクシー運転手
タクシー運転手は、人工知能によって代替される職業の一つです。
タクシー運転手の売上は、お客さんを乗せて走った時間や距離によって上がります。
つまり、効率よくお客様を乗せることが売上を向上させることになります。
タクシー運転手は長い経験によって、お客さんがどこでタクシーを利用する事が多いか知っていました。
夕方はオフィス街、夜になれば飲み屋街などと予想をしてタクシーを走らせていたものです。
しかし、人工知能はこれまでのタクシーの乗客の膨大なデータを全て記憶しています。
しかも、そのデータ量は急速に増えています。
膨大なデータ量から予測されたお客の動向は精度を上げています。
人工知能が指示した場所に行けば、多くの場合でお客様を乗せることが出来るようになりました。
熟練者の長年の経験は不要になりました。
また、自動運転可能な車が世の中に広まっていけば、さらにタクシー運転手の人材は不要になっていくでしょう。
自動運転の自動車が街を走ることを想像することは難しいかもしれません。
しかし、2020年オリンピックでは、選手村を自動運転の自動車が実際に走っていました。
自動運転のタクシーが街を走り始めるのも遠い未来ではないでしょう。
人工知能時代でも代替されない職業
人工知能時代に無くなっていく職業を取り上げてきましたが、人工知能時代でも失われることが少ない職業にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここからは、人工知能時代でも失われる可能性が低い職業を取り上げていきます。
こちらも、詳しい職業は野村総合研究所のリストに譲るとして、ここでは身近な職業について見ていきます。
- カウンセラーやソーシャルワーカー
- 教員
- エンターテイメント
- 飲食店スタッフ
- IT技術者
カウンセラーやソーシャルワーカー
カウンセラーやソーシャルワーカーなど、人間の精神的な肉体的な健康を維持しようとする仕事は人工知能時代でも残っていきます。
カウンセラーは、人間の深い心理や感情を分析して入り込まなければいけない仕事です。
人間の傷ついた心を癒すためには、機械では不十分であり、人間と対面して治療しなければいけません。
人間の深い心理や感情を理解できるのは、唯一人間だけです。
したがって、カウンセラーの仕事は今後も失われることは無いでしょう。
テレワークの普及や社会状況の変化によって、精神を病んでしまう方は多くいます。
そういった人々の力になれる心理カウンセラーは、一艘重要度を増していくでしょう。
ソーシャルワーカーの仕事は、生活に困るほどの病気や病気や怪我による後遺症に悩まされる人を助ける仕事です。
ソーシャルワーカーの仕事も、人間と人間とが直接対面し無ければできません。
ソーシャルワーカーや介護などの社会福祉関係の仕事は、人間によって人間を助ける仕事であるため機械では担う事が難しい部分です。
もちろん、部分的にデジタル化して自動化が可能な部分はあります。
しかし、福祉関係の仕事は、人工知能によって消失する可能性が少ない職業です。
教員
学校の教員は、子供たちを相手に行う仕事です。
勉強の多くはインターネットを介して学ぶことが出来ます。
しかし、社会生活に必要なコミュニケーションの能力や社会的な倫理を実体験するには、「学校」という社会を通して学ばなければいけません。
教員は人間が生きる上で必要な人間関係を学ぶ場を提供しますし、社会一般に必要な知識も教える立場にあります。
特に、子供は当然一様ではなく、多種多様です。
そんな、多種多様な子供たちへの教育をするためには、機械的な接し方ではいけません。
一人ひとりに人間として接する必要があります。
少子化が続くものの、学校教育を担う教員は今後も必要とされるでしょう。
エンターテイメント
エンターテイメントを担う仕事は、人工知能が発展しても失われる可能性が低いです。
人間はエンターテイメントに多額のお金を投じます。
音楽や芸術、映画やアニメなどテレワークが推奨されている状況でも、かなり売上を伸ばしています。
人工知能によって労働時間が大幅に削減されると、人々はその余暇を使って趣味や遊びに没頭する事が可能になります。
そういった、趣味や遊びに時間とお金をかけられるようになればエンターテイメントを求める人も多くなるのです。
エンターテイメント産業は常に新しいコンテンツを生み出さなければいけません。
そのため、コンテンツを作成する人材が必要になるのです。
もちろん、エンターテイメントビジネスも部分的にはDX化が進行しています。
ネットフリックスは、加入者の視聴データを蓄積して、今後流行しそうな傾向のコンテンツを企画しています。
しかし、コンテンツの作成などの創作には、人間の手が必要となる部分が多く存在します。
エンターテイメントビジネスは、人工知能が発展しても消失する事の少ない仕事でしょう。
接客が必要な飲食店スタッフ
接客が必要な飲食店のスタッフも、人工知能時代でも失われることが少ない仕事でしょう。
一般的な飲食店のスタッフは、人工知能時代では失われる可能性は高いです。
単に食事を作る料理人は、マクドナルドのように機械によって自動化されます。
また、単に食事を配膳するだけの人材は、回転すしのような仕組みによって不要になります。
会計も食事をした後にスマホをかざすだけで可能になります。
そのため、一般的な飲食店はコンビニエンスストアのように少なくなっていくでしょう。
しかし、接客を伴う飲食店の人員は、人工知能時代にこそ発展していくことになります。
エンターテイメント産業と同様に、接客業は人を喜ばせたり、感動させたりする産業です。
キャバクラで働く女性やバーで働くバーテンダーは、お酒を提供するだけではなく、お客様への接客が大事です。
余暇が増えた人々は、接客をしてくれる飲食店に感動を求めてやってきます。接客の仕事は人工知能では担えません。接客が必要な飲食店の従業員の仕事は消失する可能性が低いでしょう。
IT技術者
IT技術者の仕事も人工知能によって消失することは無いでしょう。
人工知能も機械である以上、故障することもあります。
人工知能の技術を導入している会社や家は、メンテナンスをする人材が必要です。
また、人間の生活を便利にするためには、人工知能の精度も上げていく人材が必要になります。
どのようなデータを人工知能に読ませるかを判断するのも結局は人間です。
人工知能はロボットや自動車などにも連携させていくことが必要です。
そういった、人工知能技術の応用の現場には、IT技術者は必須です。
人工知能時代でも、人工知能を開発する人材やメンテナンスする人材の仕事が無くなることは無くならないでしょう。
人間と人工知能が協力すれば未来は明るい
人工知能の議論は、シンギュラリティなどの文脈と同時に行われているため、自分の仕事が奪われてしまうのではないかと不安にさせることもあります。
しかし、人工知能時代は私たちにとって素晴らしい時代になるはずです。
かつては機械的な労働が、人間性を奪い、個人の生活の大部分を搾取されていると騒がれた時代がありました。
産業構造が変わる時代は、全ての仕事が変わっていきます。
そのため、この人工知能時代への突入も大きな時代の変化なのです。
この大きな時代の変化の渦中に生きていられることを幸運だと捉えましょう。
そして、この時代の流れに乗って人生を大いに楽しみましょう。
このブログでは、依存症からの回復について解説を行っていますが、依存症を克服した方はこの新しい人生も楽しむことが可能になります。
今までに学んでいなかったようなジャンルの学習に挑戦してみましょう。
人工知能時代は、新しいことに挑戦する人、変わり続けていく人々にとって素晴らしい時代になるでしょう。
不安よりも希望を持って、未来を見ましょう。