アルコール依存症の専門病院に入院したり、自助会に行ったりすると必ず聞く専門用語の「HALT」。
これは一体何を意味する言葉なのでしょうか。
アルコール依存症と診断された人の80%以上の人が、2年以内に再飲酒をしてしまう統計データがあります。
そして、その再飲酒の引き金となるのが「HALT」です。
「HALT」はそれぞれ「 Hungry(空腹) 」「 Angry(怒り) 」「 Lonely (孤独)」「 Tired(疲れ) 」の頭文字になっています。
これら4つの状況はなるべく注意するようにしているのです。
この記事では、それぞれがどのような仕組みによって再飲酒の引き金となるのか。
また、どのように対策をすれば良いのか、具体的な対策を紹介します。
この記事は
・アルコール依存症で「HALT」という言葉を知らない人
・再飲酒の引き金となる状況を知りたい人
・再飲酒の引き金となる状況を避けたい人
に向けて書かれています。
目次
HALTは意志やカウンセラーが注意簡易する主な再飲酒引き金のコト
アルコール依存症の専門の医師やカウンセラーは、回復途中の患者やクライアントに「HALT」の注意を促します。
具体的には「 Hungry(空腹) 」「 Angry(怒り) 」「 Lonely (孤独)」「 Tired(疲れ) 」です。
一度、断酒を始めてから再飲酒をしてしまう要因として、統計上これらが引き金となってしまうことが多いからです。
断酒を一日づつ継続していくためには、引き金になる要因を知り、意識することで可能な限り避けていかなければいけません。
ここからは、多くの方が再飲酒の原因となってしまった「HALT」を詳しく解説し、その対応方法も紹介します。
【Hungry】空腹の状態は再飲酒につながりやすい
【Hungry】空腹の状態は再飲酒につながる確率が非常に高くなることが、統計データで証明されています。
初めて聞いた人は「空腹」が再飲酒の要因になるとは、寝耳に水かもしれません。
分かりやすいように言い方を変えましょう。「満腹の時にはお酒が飲めない」ということです。
お酒を飲む前に食べ過ぎて、これ以上お酒が胃に入らない、という経験をしたことはあるでしょう。
つまり、私たちはお酒のために生きていたため、食事をとったとしてもきちんとお酒が入る胃のスペースを空けていたのです。
意識しなくてもお酒を飲むための食事の仕方をしているのです。
お酒は水分であり、胃にスペースが無ければ入っていきません。
アルコール依存症者の多くは、何も食べないでお酒を飲んでいた人もいます。
空腹でお酒を飲むことで、酔いの速度が速くなることも知っているからです。
実は「空腹」という状態は、意識されないという点でも非常に再飲酒につながりやすい要因なのです。
空腹を避けるためには食事の回数を増やすこと
空腹を避けるためには、食事をして満腹状態にしておけば良いのです。
当たりまえのことですが、人間には習慣もあり常に満腹の状態でいるのは意外と難しいものです。
食事は朝昼晩の三回という習慣が一般的です。
しかし、空腹の状態を避けたいのであれば、この食事の回数を増やすという方法があります。
間食を入れて、1日五回の食事をするということです。
一回の食事は腹八分目くらいに抑えて、常に胃に何かが入っている状態を保つのです。
この方法は、ボディビルダーなども実践している方法で、アルコール依存症者の食事療法にも非常に効果的です。
しかし、人によっては仕事中に食事をとることは不可能になる人もいます。
そういった場合は、軽食となるお菓子やナッツ類、最近ではプロテインバーのような商品も手軽に食べられて有効です。
空腹感を感じた場合は、すぐに口に入れられる食べ物を食べましょう。
【Angry】怒りの感情は飲酒の引き金になる
【Angry】怒りの感情は非常に激しく、再飲酒の引き金になる大きな要因です。
アルコールが切れることによって、通常以上にイライラとしてしまう経験はしていることでしょう。
しかも、この感情を抑えるために酒に手が伸びてしまうということを経験している人も多くいると思います。
アルコールによって怒りが爆発するのは、根本的な「怒り」の感情を助長しているにすぎません。
そして、この感情を意図的に抑えることはかなり難しいです。
もしろ、不可能と言っていいほどです。
強力な相手に精神力だけで立ち向かっても、なかなか勝つことは出来ません。
いつかは勝てると信じて、他の方法を試してみるべきでしょう。
何に対して怒りを覚えるのか「見える化」してみる
自分が何に対して怒りを感じているのかをメモなどに書き出してみて、「見える化」してみるのは有効な解決策でしょう。
実は自分がなぜイライラしているのかわかっていない人が大半です。
もちろん、明確に怒りの対象がわかっている人もいるでしょう。
他人にイライラする。
世の中にイライラする。
自分にイライラする。
それでも、一度メモに文字として書いてみると、かなり気持ちが落ち着いていきます。
しかも、文字として残しておくと、自分自身がどのような人物なのか浮かび上がってきます。
冷静になってから、自分自身を反省することも出来るようになるからです。
そして、もう一つ。
これは非常に大事なことです。
何かにメモを書くという事は「行動」をしているという事です。
怒りという感情に対して、理性で対抗するのは非常に難しいのですが、何か行動を起こすことで怒りの感情から集中をそらすことが可能になります。
アルコール依存症から回復をしている人の多くが、スポーツなどのアクティブな趣味を持っている人が多いのはこれらの解決策でもあるのです。
筋トレが断酒をするための最高の解決策であることは、こちらの記事で紹介しています。
【Lonely】寂しさを紛らわせるためにお酒に手が伸びる
「Lonely」寂しさもお酒を飲んでしまう要因の一つでしょう。
自分の寂しさや孤独感を紛らわせるためにお酒を飲んでいたという人は多くいます。
実はこの寂しさは多くのアルコール依存症者を再飲酒させる原因となっています。
あなたも寂しさを紛らわせるために、夜な夜な夜の街に飲みに行った経験はありませんか。
または、一緒に飲む友達もなく一人、家で飲んでいた経験はありませんか?
私自身もこの「寂しさ」を紛らわせるために夜の街で大金を払っていた経験があります。
そして、お金を使い果たした後は、一人家飲みに移行していきました。
お金が無いからです。
一人で飲むのも寂しいので、携帯電話のアドレス帳の上から下まである友達に電話をかけまくったものです。
そうこうしていくうちにアドレス帳の友達もいなくなっていき、ついにはYouTubeなどで飲み会チャンネルを観ながら、自分もそこに参加しているかのように飲んでいました。
人それぞれに状況は違うでしょうが、寂しさは再飲酒につながる大きな要因です。
そして、状況はさらに悪化していき、孤独化していくのです。
お酒を飲めない仲間を作る方法
寂しさを消すためには、そのようなマインドに変える必要があります。
しかし、これも修行僧でもない限り非常に難しいことです。
したがって、ここでも王道となるのは行動を起こすことです。
今までの酒飲み友達から距離を取り、お酒を飲まない友達を作るという事が大事です。
しかし、その友達をどこで探せばいいのだろうという事が問題になります。
お酒を飲まないようにしている友達を探す方法は2つ。
一つ目はお酒を辞めたいという意思を持っている人々が集まる自助会に参加してみること。
日本では断酒会やAAなどの自助会が定期的に行われているので、インターネットで検索してみればすぐに見つかります。
しかし、これらのミーティングも始めていくのはハードルが高いという人もいるでしょう。
そんな時はSNSがオススメです。
特にTwitterは匿名でもアカウントを作ることが可能なので、プライベートを守りたい人でも簡単に始められます。
そして、Twitterには断酒を志す人や、断酒後の人生に希望を持っている人々が日々ためになるつぶやきを残しています。
フォローしておけば、一緒に頑張っている仲間と出合うことが出来て、アルコールの問題に苦しんでいるのが自分だけではないと実感できます。
そして、最後は自分の問題を本当に理解してくれている昔からの友人を探すことです。
本当の友人であれば、あなたの問題を理解してくれてお酒の誘いをすることもないでしょうし、危険な状況から守ってくれるでしょう。
【Tired】疲れを癒すのはいつもお酒
仕事の終わりの一杯が習慣になっていませんでしたか?
肉体的に疲れた時でも、精神的な疲れを癒す時でも、常に疲れを癒していたのがお酒だった人は特に注意です。
長年の習慣は少し断酒をしたところで、なかなか改善はされません。
再飲酒をしてしまった人の中には、何の違和感もなくいつの間にか気づくとお酒を飲んでいたという経験を語る人がいます。
彼らの多くは一日一生懸命働いた後は、疲れを癒すために1杯飲んでいたのです(もちろん、1杯で終わる訳はないですが)。
肉体労働で汗をたくさんかいた後の1杯は最高だと、身体も意識の深い部分でも覚えているのです。
また、精神的な疲労は特に再飲酒につながりやすいです。
会社で働ていていると多くのストレスやフラストレーションに見舞われます。
そのため、精神的な疲労はかなり蓄積されてしまいます。
その蓄積された日々のストレスや疲れを、お酒を飲んで発散させようとするのです。
自分自身の精神的な疲労はなかなか、自分自身では認識できません。
自分自身でも何かの違和感を感じた場合は、早めに対処方法を見つけるべきでしょう。
疲れをコントロールするには仕事選びから
アルコール依存症者にとって、最も優先すべき事項は今日一日をアルコール無しで生活すること。
つまり、お酒を飲まないことが最優先事項です。
もしも、職場でのトラブルやストレスなどで疲労が溜まり、お酒に逃げ出したいというレベルまで追い込まれた場合は躊躇なく会社を辞めるという選択をするべきです。
もちろん、転職活動を行う際には、一時的に収入が途絶えてしまうこともあります。
しかし、ストレスにさらされたまま同じ会社で働き続けて、再飲酒してしまえば損失は会社を辞めた時以上になってしまいます。
アルコール依存症者の再飲酒による損害の影響は計り知れません。
収入を得るためには職を得なければいけませんが、自分に合った仕事、ストレスの無い職場を選ぶことが第一優先です。
再飲酒を招いてしまうような職場は絶対に避けるべきで、仕事選びは妥協なく行わなければいけません。
それでも、お金の問題はもちろん、大きな要因です。
お金の問題を解消する方法は他の記事でも詳しく解説しています。
あなたにとっての飲酒の引き金は何ですか?
最後に一度、自分のこれまでの飲酒の歴史や飲酒欲求が湧く状況を思い出してみましょう。
これで紹介してきた「HALT」は注意が必要な状況です。
「HALT」に注意するというのは、一般的なこと。
統計的に再飲酒をしてしまう人が多いため、これらのことにはもちろん注意が必要です。
しかし、これ以外にも注意が必要な状況はかなり多く存在します。
アルコールはそれでけ厄介な相手なのです。
そうです。
アルコールが主語です。
人間は主語ではありません。
アルコールには敵はいないのです。
自分自身が最も危険だと考えられる状況はどのような状況ですか?
「恋愛」?「パーティ」?「冠婚葬祭」?「お金」?あ
りとあらゆる状況を用意して、アルコールは依存症に対して再飲酒を促します。
自分自身が引き金になってしまう状況をメモに書き出してみましょう。
まずは自分自身を認識してから断酒は始まります。
「あなたにとっての再飲酒の引き金になるのは何ですか?」