断酒をしたところで何の希望も想像できない。
アルコールの問題から逃れられないときに陥ってしまう感情です。
アルコール依存症者が断酒を始めると、多くの側面での回復が認められます。
むしろ「希望がない」という考え方こそ、アルコール依存症者の病なのかもしれません。
しかし断酒を継続していけば、このネガティブな考え方そのものが改善されていきます。
それは、身体的な面での改善から徐々に精神的にそして社会的な改善にもつながっていきます。
アルコールを断つことは、苦しみだけではなくこれまで以上の楽しみと希望を与えてくれるのです。
この記事では、断酒をすることによって得られる身体的な回復を詳しく解説していきます。
もちろん、この記事では書ききれない側面も多くあります。
この記事は
・アルコールを断っているのに希望を持てない人
・アルコール依存症でどん底にいる人
・断酒の効果がどのようなものか知らない人
に向けて書かれています。
目次
身体的な側面の回復
アルコール依存症者が断酒をすることで、最初に改善されるのは身体的な側面です。
実はアルコール依存症の専門病院に入院することで、強制的にでもお酒を数日間止めると劇的な速度で身体的な側面の改善が認められます。
これはアルコールに問題のあるほとんどの人が経験する部分です。
血液検査で測ることが出来るγGTPの値は一日ごとに半分づつ減っていきます。
γGTPの値は基本的に低いほうが良く、男性は50以下、女性は32以下くらいが正常値だと言われています。
この値は病院に行って血液検査をしなければわかりませんが、病院に行っていない人でも身体的な側面の改善を具体的に知ることが可能です。
ここからは、アルコールを断つことによる具体的な身体的な改善の側面を紹介していきます。
手や体の震えが止まる
断酒をすれば、アルコール依存症の症状である手や体の震えが止まります。
アルコール依存症も末期になると、手が震えだします。
しかもこの手の震えはお酒が切れている時に多く起こるものであり、アルコールを摂取すれば止まります。
この経験は多くの人が体験しており、手の震えを抑えるためにお酒に手を出す人もいます。
この症状はアルコール依存症の典型的な症状でもあると言えます。
私の場合は、朝起きると手の震えが止まらずコーヒーを飲むことすら出来ませんでした。
手が震えすぎて、カップを持っていることが出来なかったのです。
精神的な部分もあり、すぐにお酒に手を出していました。
不思議なことにお酒を飲めば手の震えが止まったからです。
手の震えを会社の人に悟られないように、毎朝のようにお酒を飲むようになりました。
私の経験はこのくらいにしますが、お酒を断って数日間から10日間くらいすると、手の震えはほとんどなくなります。
そして、念願のモーニングコーヒーが飲めるようになります。
発汗や不眠の改善
アルコールを断つことで、発汗が不眠の改善にもつながっていきます。
アルコール依存症の末期になると、異常なほどの発汗が発生します。
特に寝汗は異常なほどです。
異常なほどの寝汗と書きましたが、実はアルコール依存症も末期になるとアルコール無しで眠ることが困難になります。
常に眠ろうとする感情が先行して寝入ることが出来ないのです。
奇跡的に寝入ることが出来ても、悪夢にうなされたりすることで数分で眠りから現実に引き戻されるということも起こります。
そして、数分しか眠っていないのに大量の脂汗が体中から噴き出しているのです。
私は入院生活を送りましたが、入院して最初の時期は睡眠導入剤や睡眠薬を専属の医師から処方されます。
睡眠薬や睡眠導入剤なしになかなか眠ることは出来ませんが、数週間も経つと習慣もついてきて気持ちの良い睡眠をとることも可能になります。
朝は気持ちのよいスッキリとした気分で起床できます。
このスッキリとした起床はかなり気持ちの良いものです。
あなたがアルコールに問題がある人ならわかると思いますが、あの気怠く辛い朝ではないのです。
アルコールを止めれば、異常な発汗や不眠が改善され気持ちの良い睡眠がとれるようになります。
お通じが良くなり下痢が改善される
お酒を断って規則正しい生活をし始めるとお通じが良くなり、下痢が改善されていきます。
お酒ばかり飲んでいる人は、日常的に下痢になっている人が多くいます。
特にこういった部分を大っぴらに語る人も多くありませんが、病院の統計でも証明されています。
アルコール依存症者はお腹が空いている時に、アルコールを摂取することが多くあります。
特にビールなどのような炭酸が含まれている飲み物だと、満腹感が得られて固形物を食べる必要がなくなります。
お酒と一緒におつまみなどをつまむこともあるでしょうが、一般的な食事よりも圧倒的に量は少なくなります。
一方で、お酒は大量に飲み続けることが出来るので必然的に胃の中の水分量は多くなっていきます。
したがって、次の日になると水分量の多いお通じ、つまり下痢になってしまうのです。
私の場合も、空腹時によくお酒を飲んでいました。
当然のことながら毎日のように下痢でした。
しかし、それに付け加えて慢性的に十二指腸潰瘍に悩まされていました。
十二指腸潰瘍は空腹になると腹部に痛みを感じて、何かを食べると改善されます。
私はこの痛みをお酒と胃薬で誤魔化していたため、痛みを感じることはなくなりましたが内臓にダメージは与え続けていることになりました。
そして、下痢というだけではなく、タールのような色もしていました。
血が混じっていたのです。
この状況はお酒を断つことによって全て改善されました。
お腹の痛みはありませんし、お通じも良くなり普通の色をしています。
アルコールを断てば、お通じもかなり改善されて快便になります。
視力が戻る
こちらは少し特殊な例になりますが、アルコールを断つと視力が戻るということもあります。
私の場合は、基本的な視力はよい状態に方です。
普通自動車の免許の更新などで視力を計ることがありますが、両目とも裸眼で1.0を下回ることはありません。
しかし、アルコール依存症の末期の時代には、なぜか世界がぼんやりとして見えることに違和感を感じていました。
町の眼科に検査に行き視力を計ると、左目は視力1.0を下回っていました。
眼科の医師からのアドバイスとして、「視力は体調で上がり下がりするので様子を見てほしい」ということでした。
もちろん、この時には自分のアルコールの問題を医師に伝えてはいません。
医学書にもありますが、アルコール性の視力低下は起こりえることらしいです。
その後、私は入院をしてお酒を辞めます。
そして、私はお酒を断つことでいつの間にか、視力が元の値に戻りました。
自分自身の実感としても、目に映る世界はぼんやりすることもなくはっきりと見えていますし、本を読むことも簡単になりました。
アルコールを断つことで視力すらも改善されていくのです。
視力が回復した経験に関しては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
アルコールを断って気持ちの良い日常を過ごそう
アルコール依存症者が最初に自分のアルコールの問題に気づくのは、精神的な面よりも身体的な面です。
そして、アルコールを断つことで改善されるのも身体的な面が先行します。
特に規則正しい生活が元に戻ると、睡眠の障害はなくなり毎日のようにスッキリとした気分で起きることが出来るようになります。
アルコールに問題があるあなたならこのスッキリとした感覚は久しく感じていないでしょう。
しかし、そのギャップから一般的なアルコールに問題が無い人よりも、桁違いにスッキリとした気分で起床することに快感を覚えることになるでしょう。
それだけでも希望です。
そうです。
新しい朝、希望の朝が来るのです。
日中を過ごしている間も、食欲旺盛になりますしご飯をおいしく感じることが出来ます。
もちろん、手の震えも止まりますので、コーヒーやお茶を不自由なく楽しむことも出来るようになるのです。
お酒を断てば、毎日を清々しい気分で過ごすことが出来るようになりますし、気分も前向きになっていきます。
アルコールを断つことは希望しかないのです。